墓じまいに親族が反対したら?決める権利と進め方【経験者96人調査】

この記事の中身
墓じまいに親族全員の同意書は、法律上は必要ありません(民法897条)。ただし、親のあと手帖編集部が2026年7月に墓じまい経験者96人へ実施したアンケートでは、約3割(29%・28人)が反対を経験し、そのうち10人は終えた今も「気まずさが残る」と答えています。
- 法律上、墓じまいに親族全員の同意書は必要ありません(民法897条)
- 経験者96人調査で親族の反対は29%(28人)、うち10人は今も気まずさが残る
- 反対の中身を費用・感情・体裁に仕分けると、効く打ち手が変わります
- 次の一手:承継者が誰かを先にはっきりさせ、遺骨の移転先と概算費用を用意してから、回数を分けて説明する。

まず事実:経験者の約3割が親族の反対に直面している
墓じまいの際、親族の反対はあったか(n=96・単一回答)
反対は多数派ではありません。注目すべきは内訳で、反対を経験した28人のうち10人(36%)が「今も気まずさが残る」と回答しています。反対そのものより、処理を誤ったまま完了させることのほうが後に尾を引きます。
調査の概要と限界(n=96・2026年7月・親のあと手帖編集部)
調査概要:インターネット調査(クラウドソーシング利用)/調査対象=過去5年以内に墓じまいを本人または家族として経験した人/有効回答96人(39都道府県)/調査時期=2026年7月/実施=親のあと手帖編集部。回答は自己申告であり、領収書等による裏取りは行っていません。またクラウドソーシング利用のため、回答者は現役世代・インターネット利用層に偏っている可能性があります。
法律上、墓じまいを決められるのは誰か
「お墓は全員の同意がないと動かせない」と思われがちですが、民法はそうなっていません。お墓(墳墓)や仏壇(祭具)、家系図(系譜)は通常の相続財産と切り離され、「祖先の祭祀を主宰すべき者」が承継します(民法897条1項)。
- 同条の「前条の規定にかかわらず」の前条(896条)は相続財産の包括承継の条文で、お墓はそこから外れます
- つまりお墓は遺産分割協議の対象ではなく、法定相続分に応じて分けるものでもありません
- 承継者が一人決まり、その人が管理と処分の判断をするのが法律上の原則的な形です
行政手続きの側から見ても同じで、改葬の許可の相手方は「改葬を行おうとする者」であり、親族全員ではありません(墓地、埋葬等に関する法律第5条第1項)。
根拠となる条文と、承継者が誰か分からないときの扱い
民法第897条第1項は「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する」と定めています。要約:e-Gov法令検索「民法」第897条(祭祀に関する権利の承継)
墓地、埋葬等に関する法律第5条第1項は「埋葬、火葬又は改葬を行おうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)の許可を受けなければならない」と定めています。要約:e-Gov法令検索「墓地、埋葬等に関する法律」第5条
したがって「親族全員の同意書がなければ墓じまいできない」という決まりは、法律上は存在しません。
誰が承継者か分からない場合:民法897条2項は「前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める」と規定しています。故人の指定もなく慣習もはっきりしないときは、家庭裁判所に定めてもらう道が条文上用意されています。ただし裁判所ウェブサイトの「相続に関する調停」の手続一覧にはこの手続の専用ページが見当たらないため、実際に申し立てる際の手続名・必要書類は、管轄の家庭裁判所に直接確認してください。
ただし「法的に決められる」ことと「決めてよい」ことは別です。「今も気まずさが残る」と答えた10人が生まれるのは、たいてい押し切りの後です。法律は、話し合いが行き詰まったときに立ち返る足場として使うのが現実的です。

なぜ反対されるのか:調査の自由記述から見えた4つの型
反対を「感情論」とひとくくりにすると対処を誤ります。自由記述を読み比べると、理由は①価値観・体裁、②費用負担への不公平感、③合意形成の難しさ、④説明が届かない相手がいる、の4つに分かれます。
4つの型それぞれの、自由記述にあった具体例を読む
- ① 価値観・体裁:「墓を潰すのは非常識だ」という規範からの反対。大阪府・寺院墓地の回答者は、親族の9割が賛成していても1割が猛反対したと述べています
- ② 費用負担をめぐる不公平感:北海道・公営霊園の回答者は、費用を出さない親戚から文句を言われたと回答しています
- ③ 合意形成そのものの難しさ:愛知県・公営霊園の回答者は、親・兄弟・従姉妹まで全員の意見が食い違ったと述べています
- ④ 説明が届かない相手がいる:秋田県・公営霊園の回答者は、認知症の親族に説明が伝わらないまま進める心苦しさを挙げています
1画面1問の選択式/登録不要ですぐ結果
あなたの場合はどれ?型別の打ち手
| 反対の型 | 効きやすい打ち手 | 次にすること |
|---|---|---|
| ① 価値観・体裁 | 話し合いの設計で動かせる。第三者の説明が効く | 代行事業者や行政書士に説明役を担ってもらう |
| ② 費用負担への不公平感 | 費用の見える化と分担の提案で緩和しやすい | 総額と誰がいくら負担するのかを数字で示してから話す |
| ③ 合意形成の難しさ | 話し合いの設計で動かせる。第三者の介在も効く | 承継者が誰かを先にはっきりさせ、回数を分けて説明する |
| ④ 説明が届かない相手 | 説得ではなく、事後の共有をどう行うかの課題 | 承継者の判断で進め、経過の共有を丁寧に行う |
| 承継者が誰かに争いがある | 家庭裁判所に定めてもらう道がある(民法897条2項) | 管轄の家庭裁判所に、手続名と必要書類を確認する |
反対されたときの進め方:4ステップ

反対を解いた人がたどった順番
兵庫県・寺院墓地の回答者は、当初難色を示していた寺院に「子どもへ負担を掛けたくない」と説明し、数回の話し合いを重ねて解決したと述べています。一度で決着させようとせず、回数を分けた点が共通する特徴です。
参考:本調査では、決めてから完了までの期間は「3〜6か月」が44%で最多、「1年以上」も14%ありました。ただし「親族の反対の有無」と「所要期間」のクロス集計は行っていないため、反対があると期間が延びるかどうかは本データからは言えません。
区画の広さと立地から概算がわかります(無料・当サイト運営)。話し合いの前に数字を用意しておくと、費用が理由の反対は動きやすくなります
やってはいけない進め方
- 工事の契約を済ませてから事後報告する。「今も気まずさが残る」と答えた層と最も重なりやすい進め方です
- 「法律上は私が決められる」を最初に持ち出す。最後の足場であって、第一手にすると立場の争いに引き込みます
- 費用の全体像を示さないまま同意だけ求める。②の型を自分から作ることになります
- 供養の行き先を決めずに「墓じまいしたい」とだけ伝える。相手には『先祖を放り出す』としか聞こえません
それでも折り合わないとき
- 承継者が誰かという点自体に争いがあるなら、家庭裁判所に定めてもらう道(民法897条2項)
- 親族以外の第三者に手続きの説明役を担ってもらう方法
改葬許可申請をはじめ行政手続きが絡むため、代行事業者や行政書士が間に入ると「制度に沿った手続き」として受け止められやすくなります。③の合意形成型・①の体裁型には、この第三者の介在が効くことがあります。
親族全員の同意書がないと墓じまいはできませんか?
法律上、親族全員の同意書を要求する規定はありません。お墓は民法897条により祭祀を主宰すべき者が承継し、改葬の許可も墓地埋葬法5条に基づき「改葬を行おうとする者」が市町村長から受けます。ただし墓地の管理者が独自に書類を求めることはあるため、必要書類は管理者と市区町村の双方に確認してください。
兄弟の一人が強く反対しています。無視して進めても違法ではありませんか?
承継者が手続きを進めること自体は違法ではありません。ただし本調査では、反対を経験した28人のうち10人が完了後も「気まずさが残る」と回答しています。法的な可否と親族関係は別の問題です。
誰が承継者なのかはっきりしません。どう決めればよいですか?
故人による指定があればその人、なければ慣習に従って決まります。慣習が明らかでないときは、民法897条2項により家庭裁判所が定めます。具体的な申立ての方法は、管轄の家庭裁判所にお問い合わせください。
反対されないためには、いつ切り出すのがよいですか?
遺骨の移転先と概算費用を用意し、複数回に分けて説明した人が解決に至っている例が自由記述には見られました。ただし本調査から「最適な時期」を示すデータは得られていません。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言・税務相談ではありません。個別の判断が必要な場合は税理士・行政書士・弁護士等の専門家にご相談ください。 記載の費用・相場は出典元の公開情報に基づく目安であり、実際の金額は寺院・霊園・業者により異なります。