実家を解体するときの流れ|見積もりから滅失登記まで

実家の解体は、業者に頼めば全部が済む工事ではありません。床面積80㎡以上の解体では、着手日の7日前までに届け出る義務が「発注者」にあります(建設リサイクル法10条)。取り壊し後は、滅失の日から1か月以内に滅失登記を申請する義務が所有者にあります(不動産登記法57条。怠れば10万円以下の過料)。所有者が自分で動くのは、この2つだけです。
- 着工7日前までの届出は発注者(所有者)の義務
- 取り壊し後1か月以内に滅失登記。怠ると10万円以下の過料
- 更地にすると土地は住宅用地特例から外れる
全体の流れと、それぞれ誰の義務か
| 工程 | 期限 | 誰が |
|---|---|---|
| 1. 現地を見てもらい、見積もりを取る | — | 所有者 |
| 2. 業者を決めて契約する | — | 所有者と業者 |
| 3. 石綿(アスベスト)の事前調査と結果の報告 | 着工前 | 元請業者または自主施工者 |
| 4. 分別解体等の計画の届出 | 工事に着手する日の7日前まで | 発注者(所有者) |
| 5. 解体工事・廃材の処理 | — | 業者 |
| 6. 建物の滅失登記の申請 | 滅失の日から1か月以内 | 表題部所有者または所有権の登記名義人 |
届出先は都道府県知事ですが、建築主事を置く市町村・特別区の区域内では、その市区町村長が届出を受理します(建設リサイクル法施行令9条1項)。実務では業者が届出を代行することが多いのですが、法律上の届出義務は発注者にあります(同法10条1項)。代行してもらう場合も、届出が済んだことを控えで確認してください。
業者を選ぶときに確認できること
解体工事業を営もうとする者は、その業を行おうとする区域を管轄する都道府県知事の登録を受けなければなりません(建設リサイクル法21条1項)。建設業法の土木工事業・建築工事業・解体工事業の許可を受けている者は、この登録の対象から外れます。登録は5年ごとの更新です(同条2項)。
- 解体工事業の登録、または建設業法の許可(土木工事業・建築工事業・解体工事業)があるか
- 見積書に内訳があるか(本体工事/廃材の処分/付帯工事/整地)
- 追加費用が発生する条件が書かれているか(地中の埋設物、想定外の残置物など)
- 石綿の事前調査を誰がいつ行うか
- 近隣への挨拶と養生をどうするか
見積もりは2社以上から、同じ条件で取って比べます。内訳の粗さそのものが判断材料になります。
石綿(アスベスト)の事前調査
建築物等を解体する作業を伴う建設工事では、元請業者または自主施工者が、石綿含有の有無について事前に調査する必要があります。調査そのものは工事の規模を問いません(環境省)。
そのうえで、建築物の解体で作業の対象となる床面積の合計が80㎡以上の場合は、調査結果を都道府県または大気汚染防止法の政令市へ報告する義務があります。つまり80㎡は「報告」の線であって、「調査」の線ではありません。
これは所有者ではなく元請業者側の義務ですが、調査の結果によって工事の方法と工期が変わります。見積もりの段階で、調査を誰がいつ行うのかを確認しておいてください。

解体を決める前に確認したいこと
- 土地の使い道:更地にしてから売る、貸す、そのまま持つ。行き先が決まらないまま壊すと、税の負担だけが残ります
- 接道の条件:更地にしたあとに建物を建てられる土地かどうか。再建築ができない土地だと、売り方も価格も変わります。市区町村の建築担当窓口で確認できます
- 名義:名義が故人のままだと、解体後の土地の売買で所有権の移転登記ができません。相続登記が先です
- 売却の予定:相続した実家を売るなら、譲渡所得の特別控除の要件に「家屋の取壊し等」が含まれます。壊す順番と時期が控除に効くので、税務署または税理士に先に確認してください
- 賦課期日:固定資産税は毎年1月1日時点の状況で決まります(総務省)。工期と年度の関係を確認しておくと予定が立ちます
- 境界:更地にすると境界の目印が失われることがあります。工事の前に写真と資料を残しておきます
取り壊した後にやること
滅失登記までの手順
- 1か月以内
- 建物の滅失登記を申請する(不動産登記法57条)。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です(同164条1項)
- 業者から受け取るもの
- 取壊し証明書(建物滅失証明書)。工事の完了時に必ず受け取ってください。あとから請求すると手間がかかります
- 行き先
- 実家の所在地を管轄する法務局。必要書類の一覧と進め方は、法務局の登記手続案内または土地家屋調査士に確認してください
- 同時に確認
- 土地の固定資産税。更地になると住宅用地特例から外れます(総務省・国土交通省)
あなたの場合はどれ?
| いまの状況 | 次の一手 | どこへ |
|---|---|---|
| 建物が傷んでいて周囲に危険がある | 放置して勧告に至れば住宅用地特例も外れる。手前で相談する | 市区町村の空き家窓口 |
| 更地にして売りたい | 解体の前に売る相談を1社は入れる。建物付きのまま進むこともある | 不動産会社 |
| 名義が親のまま | 相続登記が先。解体後の土地を動かせなくなる | 法務局・司法書士 |
| 費用の見当がつかない | 2社以上から内訳の分かる見積もりを取る | 解体業者 |
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よくある質問
解体の届出は業者に任せていいですか?
任せてかまいませんが、法律上の義務者は発注者(または自主施工者)のままです(建設リサイクル法10条1項)。代行してもらう場合も委任の形を確認し、工事に着手する日の7日前までに届出が済んだことを控えで確認してください。対象は建築物の解体工事で床面積の合計が80㎡以上のものです(同施行令2条1号)。届出先は都道府県知事ですが、建築主事を置く市区町村ではその市区町村長になります。
滅失登記をしないとどうなりますか?
建物が滅失したときは、滅失の日から1か月以内に滅失登記を申請する義務があります(不動産登記法57条)。正当な理由がないのに怠ると10万円以下の過料の対象です(同164条1項)。登記上は建物が残ったままになるため、その後の土地の売買や家屋の課税関係でも支障になります。
この記事は制度の一般的な説明です。届出の要否と届出先は実家のある市区町村の建設リサイクル法担当窓口へ、滅失登記の手続きは法務局または土地家屋調査士にご確認ください。